趣味関連で何故かずっと覚えている言葉や一文というものがあると思うのですが、私の中でそれに該当する1つが「FILM KILLER STREET (Director's Cut) & LIVE at TOKYO DOME」のブックレット桑田さんインタビューの「リハーサルからツアーの最後までセットリストが変わっていない」話なのです。この頃にサザン好きとなった私には当時そのことが珍しいということが分からず、あまりピンとこない話ではあったのですが、サザンを知っていくにつれ、なるほど…と感じるようになっていたのです。
そんな「みんなが好きです!」のセットリストを改めて何となく振り返ってみたくなってしまい筆を取った雑文でございます。
セットリストに沿って、何となくコーナーになっていると思われることで区切りまして書いていこうと思います。
1.Big Star Blues(ビッグスターの悲劇)
2.My Foreplay Music
3.希望の轍
まず最初のMCに入る前、スタートの3曲を振り返ってみます。
1曲目は「Big Star Blues(ビッグスターの悲劇)」スタートの定番曲ともいえますが、実はライブ1曲目は「歌うサザンに福来たる」以来実に15年ぶり、2014年の「ひつじだよ!全員集合!」でライブ1曲目起用単独1位となるのですが、この時は「女呼んでブギ」と並んでいたのですよね…というのは余談です。
Big Star Blues(ビッグスターの悲劇)~My Foreplay Musicと2曲続けてアルバム「ステレオ太陽族」からの選曲となりましたが、初のドームツアーで前回のアルバムツアーでもある1999年「Se O no Luja na Quites(セオーノ・ルーハ・ナ・キテス)~素敵な春の逢瀬~」では「JAPANEGGAE」~「ミス・ブランニュー・デイ(MISS BRAND-NEW DAY)」とアルバム「人気者で行こう」から2曲続けていましたし、1つ過去のアルバムからメドレーのような形でライブをスタートさせるというのは、偶然なのかも知れませんが面白いですよねえ…。また新しいサザンを模索していた時の人気者で行こう、2枚組の所謂「大作」アルバムを完成させてのステレオ太陽族、というのは当時のサザン、桑田さんの心境と言うと大袈裟ですが、ちょっと意味深な感じがあったり無かったり。
そして3曲目は安定の「希望の轍」。サザンとしては初めて年越しライブが絡むアルバムツアーで、この頃はライブ3曲目が年越し曲というのがイコールになっていましたし、年越しとこの後MCを挟んで4曲目から「キラーストリート」の世界に入る1歩手前という2つの区切りがある、と考えますと、それを任せられる曲としてはベストだったのかな…と。
スタートは所謂定番と言いますか、良い意味で演者もやり慣れた、客席側も聴き慣れた3曲とも言えますし、2枚組30曲のアルバムということでスタートからもしかしたらキラーストリートのナンバーをやるのでは…というある種の期待と不安をまず意図的に消そうとしたところもあったのではないのでしょうか。
4.神の島遥か国
5.セイシェル ~海の聖者~
6.愛と死の輪舞
7.JUMP
8.愛と欲望の日々
9.別離
10.ごめんよ僕が馬鹿だった
11.リボンの騎士
キラーストリートコーナーその1、といったところでしょうか。
先行シングル「BOHBO No.5」との両A面シングル曲でもありました「神の島遙か国」からこのブロックはスタートしました。結果的にキラーストリート収録のシングル曲は、この曲と「愛と欲望の日々」、そして本編ラストの「BOHBO No.5」の3曲だけでしたね。まあ愛と欲望の日々からがアルバムの先行シングルだった、と思えば納得出来るような…。「涙の海で抱かれたい~SEA OF LOVE~」はサザン活動再開・25周年シングルという単独感がありますし、「彩~Aja~」と「君こそスターだ/夢に消えたジュリア」は前年2004年の「真夏の夜の生ライブ~海の日スペシャル~」・「暮れのサナカ」で共に同じような位置で演奏されていましたし(彩は3・4曲目、スターとジュリアはセットで煽り頭)、使い方がそこに限られてしまうタイプの曲なのかな、と。3回続けて同じようにはしたくなかったという事だったのかも知れませんね。
ここの8曲は比較的キラーストリートの中でもポップな部類に入るタイプの曲が多い印象ですね。その一方でポップさが被らないといいますか、(「八月の詩」や「LONELY WOMAN」を演奏しなかったように)曲のテイストが被らないように配置しているように感じましたね。
12.YOU
13.海
14.栞のテーマ
15.Bye Bye My Love(U are the one)
ここは海のYeahコーナーといいますか、世間のイメージする夏のサザンメドレーともいえるコーナーになりますでしょうか。
所謂ライブ定番といえる曲達ではありますが、「YOU」と「海」は2003年の「建長寺ライブ」でも演奏されてはいますが、ファンクラブ限定・なおかつ放送されず(製品化も2010年)という事で、実質「茅ヶ崎ライブ」以来5年ぶり、「栞のテーマ」は「シークレットライブ’99 SAS 事件簿in歌舞伎町」以来6年ぶり、「Bye Bye My Love(U are the one)」は「晴れ着DEポン」以来6年ぶりと実はちょいとお久しぶりな方々でしたね。
この前後のアルバムツアーである、セオーノでは「Young Love」、おいしい葡萄の旅では「KAMAKURA」と過去のアルバム曲を連続で演奏するブロックがありました。今回はオリジナルアルバム単体というよりも夏曲を集めたまさにベストアルバム「海のYeah!!」からのチョイスという感じになりましたね。
栞のテーマはアルバムのライターノーツの中で「ひき潮〜Ebb Tide〜」のところで名前を挙げていましたし、そういったところでの選出だったりしたのでしょうか…。
これは「ROCK IN JAPAN 2005.」への出演の影響もありそうですね。「TSUNAMI」以降からキラーストリートまでの間にサザンへ興味を持った方向けにとも見えますし、この後の2ndキラーストリートコーナーをより引き立たせるための対比として良い意味での前座といいますか、その間の混沌の渦に呑まれていく感じが美味なる多面体としてのサザンを味わえるように今見ますと思えますね。
16.からっぽのブルース
17.恋するレスポール
18.夢と魔法の国
19.キラーストリート
20.限りなき永遠の愛
序盤のキラーストリートコーナーが表の陽であるとしたら、このコーナーは裏の陰、といえますでしょうか。こういう形でキラーストリートが2枚組のアルバムということをライブでも再現している感が良いですよねえ。
アルバムの1枚目の1曲目、始まりの曲である「からっぽのブルース」でこのコーナーが始まるというのもより強調感があるといいますか、先程までの空気が一気に変わったというのが画面越しでも伝わってきますね。
このコーナーがみんなが好きです!というライブの「核」になっていると思います。ここの魅せる、といいますか、演者がやりたいことをしているのが、(勿論喜ぶ方もいますが、声を挙げるということではなく)客席側を黙らせる、特にドームの5万人が沈黙とともにステージを見る、というのも演者としてはまた盛り上げるのとは違う快感があるのかな…と。
改めてこう流れで見ますと、緩急というのは大事だと…。野球で160キロのボールを投げても投げ続ければやがて打者に捉えられてしまうように、一辺倒にならないようにコーナー毎にうまく押したり引いたりをしているように感じますね。最初のキラーストリートコーナー以降はアンコールまで、4~5曲をセットに色の違うブロックを組み合わせて構成しているのも、メリハリをきっちりと付けていたのかな…と思います。
21.ロックンロール・スーパーマン~Rock'n Roll Superman~
22.ミス・ブランニュー・デイ(MISS BRAND-NEW DAY)
23.マチルダBABY
24.イエローマン~星の王子様~
25.BOHBO No.5
煽りコーナーが新曲で始まり新曲で締める、というのもアルバムツアーならでは、という感じがあって良いですよね。今ではすっかり常連としてベテラン感を出しています「ロックンロール・スーパーマン~Rock'n Roll Superman~」先輩のライブ初陣と初々しい感じがありますね(?)。流れもあるのか次の「ミス・ブランニュー・デイ(MISS BRAND-NEW DAY)」師匠も煽りでは珍しくギター持ちでしたね。逆の流れでおいしい葡萄の旅でも登場されていますし相性は良かったのですね。
前回のアルバムツアーの本編ラストであった「イエローマン~星の王子様~」の次にラストとして「BOHBO No.5」が来るのも前回と繋がっている感じがあって好きな流れです。RIJ2005では「勝手にシンドバッド」の次というポジションでしたし、急遽シングルにしたというのも頷けますね。
個人的にはからっぽのブルースから続けて、ここのBOHBOまでの流れが、製品版でのドームの密閉された巨大な空間と合わさって漂ってくるダーク感のようなものがあって大好きなのですよね…セオーノやその後のドームツアーとはまた違う何かを感じてしまったりするのです…。
今から見ますと煽りに「マンピーのG★SPOT」が入っていないのが、珍しいといいますか新鮮といいますか…。ただこの2003~05年の煽りを見ますと、「ボディスペ・マンピー・シンドバッド」と「ミスブラマチルダ」の2つの組み合わせどちらかを起用するというのが傾向としてあるのですよね(暮れのサナカ3曲目にマンピーというのはありましたが、あくまで煽りの中での話と言うことで…)。ライブの大定番ではありましたが、扱いといいますか明らかに立ち位置が変わったのは、2013年の「SUPER SUMMER LIVE 2013「灼熱のマンピー!! G★スポット解禁!!」」と個人的には感じておりまして、そうなる前の2003~05年という時代の煽りの模索といいますか、期待に応えつつも同じ事はしないように…と組み立てている感じが伝わってくるのが結構好きだったりするのですよね…。
En1.勝手にシンドバッド
En2.TSUNAMI
En3.LOVE AFFAIR~秘密のデート
En4.心を込めて花束を
アンコール頭でいきなりシンドバッドというのは珍しいですよね。次の「TSUNAMI」への流れを見ますと、この年ちょうどそのシンドバッドからTSUNAMIまでのシングルが12cm盤として再販されていますし、それを踏襲した流れだったのかしら…と(Big Star Bluesでの大復活祭の時のようなovertureも「フリフリ’65」のシングルにライブテイク音源が収録されていたのもあったりしたのでしょうか…)。よくよく考えますと2005年は8年ぶりのオリジナルアルバム「キラーストリート」発売が最も大きいトピックスであったと思うのですが、ROCK IN JAPAN出演にこの44枚のシングル再販となかなかなトピックスが続いていましたねえ…。そういうことも引っくるめたセットリストと考えると一度も変えなかったのは奇跡、と桑田さんが仰っていたのも分かる気がしますね。
ラストは「心を込めて花束を」。キラーストリート収録ではないこの曲を持ってくるのは、おや…と思いましたが、でも何となく「限りなき永遠の愛」も「ひき潮〜Ebb Tide〜」もライブのラスト、という感じがあまりイメージ出来ないのですよね。勿論最後に来てもおかしくはありませんし、その方がよりアルバムツアーの締めに相応しいとは思うのですけども、みんなが好きです!というライブの締めと見ると何処かズレを感じてしまうといいますか…。
おそらく私の中でこの2曲は悲しみや終わり感が強い曲になっているのだと思うのです。(毎度のことではありますが)所謂解散説もありましたし、マイルドな曲で…というのがあったのかもしれません。
みんなが好きです、の最後に心を込めて花束をというのが、こちら側へのプレゼント感があって、そういった意味ではこのツアー名の締めとしては良かったのかも知れません。
…前にふと思ったのですが、歌詞のパパとママが、「パパ(Disc1)とママ(Disc2)に花束を」、とキラーストリートへのお疲れ様を表していたら面白いな…と。
ライブの振り返りとしては以上でございます。
キラーストリート収録曲のライブ演奏についても少し…。
このライブでは30曲中15曲、アルバムから演奏されましたね。
演奏されなかった15曲を見てますと、上記しましたが9曲は涙の海から愛と欲望の日々までのシングル収録曲となっていますね。やはりそこで区切っていた感じなのでしょうかね…。残りの6曲は、
・山はありし日のまま
・殺しの接吻~Kiss Me Good-Bye~
・八月の詩
・Mr.ブラック・ジャック~裸の王様~
・The Track for the Japanese Typical Foods called “Karaage” & “Soba”~キラーストリート(Reprise)
・ひき潮~Ebb Tide~
となっておりますね。
「八月の詩」は翌年の「THE夢人島Fes.2006 WOW!! 紅白! エンタのフレンドパーク Hey Hey ステーション …に泊まろう!」の1日目で、「Mr.ブラック・ジャック~裸の王様~」は夜遊びライブで演奏はされましたが、残りの4曲は未だ披露無し、となっております。
ただ2019年の「“キミは見てくれが悪いんだから、アホ丸出しでマイクを握ってろ!!”だと!? ふざけるな!!」では候補として「殺しの接吻~Kiss Me Good-Bye~」が上がっていましたし、このライブで彩が15年ぶりに演奏されるなど、「今」の方がライブでキラーストリート曲が演奏される感じが何となくあるような気がします。勿論アルバムツアーで見れることがベストなのでしょうが、時を得て演奏される、というのが時を駆けるよという感じがありませんか(?)。そういうところでもしかして…の期待をある意味で持たせてくれるというのが、初めて買ったCDということもあり、キラーストリートというアルバムに特別な偏愛を抱いている身としては楽しみだったりするのですよね…。
…というささやかなる偏愛(?)を晒したところで締めたいと思います。