適当文集

140文字でも書けそうな事を引き延ばして雑に書くところ

Act Against AIDSにおける「月」の立ち位置についてふと思った事を

Act Against AIDSでのライブセットリストを見ていますと、桑田さん自作曲の中で「月」が2回(歌謡サスペンス劇場(1997年)・桑田佳祐が選ぶ20世紀ベストソング(2000年))演奏されていますね。その2回とも立ち位置(使い方)についてふと思うことがありましたので、またつらつらと雑文を書いていきたいと思います。

 

まず「歌謡サスペンス劇場」から見ていきましょう。タイトルの通り、所謂歌謡曲がテーマとなったライブでしたね。このライブでは11曲目の東京ブギウギ~15曲目の買物ブギという桑田さん曰く服部良一メドレーというコーナーが設けられていましたが、このコーナーの後に演奏されたのが「月」でしたね。もちろん桑田さんの自作曲ではありますが、買物ブギの後にMCなどを挟まずに演奏されており、何処か敢えて自分の曲をここにぶつけた感があるといいますか、服部良一という音楽家に、桑田佳祐という音楽家として作った曲で勝負する、という構図になっている感じがとても好きなのですよね…。もちろんここでの勝負は勝ち負けでは無くて、桑田さんの血肉になっているであろう音楽の1つと並べる、という桑田さん流のリスペクトだったのかな…と思うのです。

このライブでの「月」に関してもう1つ付け加えますと、ギターを持っているというところでしょうか。基本的にこのライブはボーカリストに徹するというのがあったのが、あまりギターを持っていないのですが、「月」の時は持っているのですよね。他にギターを持っているのがフォークソングコーナーの3曲(春のからっ風・夏休み・チューリップのアップリケ)にアンコールの「今日の日はさようなら」、そして「旅人よ」でしたね。今日の日はさようならとフォークコーナーは曲調や演出的にギター持ちになるのは当然ではありますが、ここ一番で持っている感じが、ある種装備と言いますが、1つ違う見せ方、気合いの入れる瞬間なのかしら…とも思ってしまうのです。もしくは旅人よの加山雄三と自身を少し重ねようとしたところもあったのかもしれませんね。

 

桑田佳祐が選ぶ20世紀ベストソング」の方を見てみましょう。確かライブのMCで「迷ったけどその時の気分で選んだ」的な事を話していたと思うのですが、邦楽洋楽問わずの選曲の中で唯一自作曲の中からセレクトされた(最終日に「いとしのエリー」が追加されてはいますが、個人的にこれはおまけ感がありますのでちょっと別ということで…)曲がこれまた「月」なのですよね。何と申しましょうか…。「月」という曲に対する信頼感といいますか、ライブ名の自分自身が選ぶベストソングという看板を掲げた中に自作曲を入れる際に選曲できるというある種の自信を持った曲ともいえるのかもしれませんね。

歌謡サスペンス劇場との違いを挙げるとしますと、服部良一コーナーにぶつけたかのような選曲だったのに対して、このライブでは3曲目というかなり早い段階で演奏されていると言うことでしょうか。これはおそらく1998年の「オールリクエストショー」がサザン・ソロ・KUWATA BANDと自作曲を多く演奏した影響もあったのではないのでしょうか。1曲ポンと序盤に演奏することで、自作曲を求めている声にも応えつつ、後は歌いたい曲を自由に歌いますというある種の宣言でもあったようにも感じるのですよね。

 

ある意味で「月」という曲はAAAにおいて桑田さんの自信と1つを切り替える為の曲であったのかもしれません。まあ当時のソロライブでは宮城ライブまでほぼ毎回演奏されていましたし、単に桑田さんが好きな曲を歌っただけ、ということなのかもしれません。

近年のライブではなかなかお目にかかれない曲になってしまっていますが、ベストアルバム「いつも何処か」に収録されますし、今回のツアーでは期待したいところですね。

その時はあまり都合の良い解釈をし過ぎないよう気を付けたいと思います(?)。